なんで!?

その1 腹が陥没!

その2 腹が裂ける!

その3 顎が割れる!

その4 光る膝

その5 バリをめぐる一考察

その6 荒れる石膏

その1 腹が陥没!

 

 石膏型から抜いたグリーンウェアが無惨に陥没!

 (両断されているのは原因究明のために事後に処置したもの)

 何度も同じことになってしまうのはなぜ!!?

 

 どうやら排泥のスピードが速すぎたのが原因。

 また、鋳込み口も狭かったので、排泥の際に塞がったり開いたり(ボコッ、ボコッと音がする状態)。

 その結果、内部の気圧が間歇的に低下して、粘土が石膏から引き剥がされたようだ。

 

 大きな型ほど、時間をかけて、鋳込み口が塞がることがないように、徐々に排泥することが必要。

 (2~30分くらいかけることも。)

その2 腹が裂ける!

 

 

 焼成後、見事な一直線の亀裂が!

 記録的な寒波が襲来した夜間に焼き上がった。もっとも気温の低い時間帯から冷却が始まることになったわけである。

 焼き上がり直後ほど、外気との温度差が大きいので、冷却のスピードは時間との反比例の双曲線を描くことになる。また、外気の気温が低いほど、その落差も大きいので、焼き上がり直後の冷却のスピードもより速くなる。

 どうやら急激に冷却されるとこのようなヘアラインクラックが入ることがあるようだ。

 焼き上がりが昼間になるように調整するしかないかな ―。

 

 上記のように考えたのだが、原因はどうやら違っていたようだ。

 改めてこのトラブルを生じたパーツに光を当ててみると、内部にスリップが流れた痕跡があることがわかる。ヘアラインクラックはこの流れたスリップのへりに添って生じている。


 

 

 このケースでも同様のトラブルが生じた。

 

 

 クラックは、やはり流れたスリップのへりに添っている。


 

 原因は次のように考えられる。

 排泥後、既に乾き始めた本体部分に、まだ液体状のスリップが垂れて付着すると、陶土の密度(=陶土が含む水分量)が異なるもの同士が密着する状態になる。

 

 焼成するとスリップの水分は抜け収縮する。

 しかし、それぞれの陶土密度=水分量が異なるため、収縮率にギャップが生じる。

 本体は、より大きく収縮する垂れたスリップに引き付けられるようにして裂けるのだと推測される。

 排泥しきれなかったスリップが内部に垂れるのは、通常にあることで、これに起因してトラブルが発生することは滅多にない。

 だが、このケースのような比較的大きなパーツの場合、前記「その1 腹が陥没!」に記したように、排泥に時間をかけることがある。このとき、排泥は背を下、腹を上にして行っており、排泥を終了するまで相当な時間(15分くらい?)かけたはずである。すなわち、腹側は既にある程度乾き始めていたと思われる。そこに水分をたっぷり含んだスリップが垂れたため、陶土密度に顕著なギャップが生じたと推測される。

 防止策。❶排泥は(鋳込み口を塞がないよう注意しつつ)極力速やかに行うこと。❷排泥直後、石膏型の鋳込み口を下にしたままにしてまだ残っている液状のスリップを流し出すが、これを完全に行うこと。(不完全だと、石膏型を立て直した際にスリップが垂れてしまう。)

その3 顎が割れる!

 

 

 焼成後、顎関節部にひび割れ!

 どうやら、パーティングライン付近に発生したもよう。

 内部から光を当ててみる。

 明らかにこの部分が極端に薄くなっている。

 完全にパーティングラインと重なっているわけではないので、なぜこうなったのか、原因は定かではない。(なぜか何度鋳込んでもこうなるのだ。)

 

 

 だが、対策は立てねば。

 グリーンウェアの状態で薄くなった部分をある程度粘度のあるスリップで埋める。

 どうやらこれで無事焼きあげることができた。

 型抜きしたグリーンウェアの傷や欠損をスリップで補填するなどの作業はよく行うことで、小さなものなら特段の注意はいらない。

 だが、大きな修復などの場合はトラブルを生じやすい。

 

 「ぬ」を作るとき急遽思い立って、男の子にすることにした。

 だが差しあたって型は女の子のものしかない。「ち」との類縁にしたいこともあって、その型を援用することにした。

 だが、問題は若干とはいえ胸がふくらんでいる。これを平らにしなければならない。抉ったところはかなり大きな穴になった。これを塞ぐ必要がある。

 なんとかこの穴を埋めて形を整えたものの、いざ焼成すると無惨に割れ、肌も醜いケロイド状になってしまう。

 前述「その2 腹が裂ける!」でも触れたように、乾きかけているグリーンウェアに新たな陶土を付けたすと、その陶土密度のギャップから焼成後に割れ等のトラブルが生じるのだ。

 何度かの失敗。では、本体のグリーンウェアとできるだけ同じ状態のものを補填材料にすればいいはずだ。

 そこで使ったのが、ゴムを通すために切り取る股関節部分の陶土。丸い形をしていて大きさもちょうどいい。これを胸の穴に‘移植’して段差をスリップで埋める。それから整形。

 

 結果は上々。

 ‘大手術'だったが、割れも肌荒れもなく無事焼き上がった。

 

 グリーンウェアの指が折れてしまったのをスリップを足してくっつけて焼くと、わずかにその部分が膨れ上がっていたりする。

 補強・修正の際は、陶土の密度をできるだけ均等にすることが肝要である。

その4 光る膝

 

 

焼成後、部分的に光沢が出てしまうことがある。

 

 「ガラスエッチング剤」というので、これを曇らせることができます。


その5 バリをめぐる一考察

 焼き上がると、パーティングラインのところが膨れたように盛り上がってしまう。

 焼成前にこの部分をどんなに丁寧にならしておいても、予防はできない。

 たまにこの膨れが生じないこともあって、どうしてそうなるのか、謎である。

 

 アンティークでも、ほとんどこうなっているようだ。

 (髪の毛や帽子で隠れてしまうので、ブリュやジュモーでも問題視されなかったのかもしれない。)

 だが、髪をアップにするような場合、ここはきれいに焼き上げたいとろだ。

 なぜ、膨らみ(バリ)が生じないことがあるのかは謎だが、バリができる原因は推測できる。

 スリップは泥土の粒子と液体が混ざっている状態。

 焼き上がると、水分が抜ける分だけ体積が収縮する。(約85%になるのは周知のとおり。)

 ところが、石膏の合わせ目(パーティングラインの部分)には、毛細管現象によって他の部分より細かい泥土の粒子が引き寄せられる。

 その結果、この部分はより泥土の密度が高くなり ―すなわち水分の割合が少なくなるため、収縮率は他より少なくなる。

 よって、ここだけ膨らんだような状態になる。

 

 

焼き上がったパーツの断面は、こんな形になっている。

 パーティングラインにあたる部分は収縮が少ないので、このように膨らんだ形になるわけだ。

 バリを強引にヤスリで削って平にすれば、その部分は当然薄くなる。

 光をあててみれば一目瞭然(矢印のところ)。

 (ヤスリで削った跡はやはりビスク焼きと同じような肌合にはならない。)


  そこで、グリーンウェアの段階でパーティングラインの部分を溝状に削り取り、そこに新たなスリップを埋め込んだうえでならしてみた。

 しかし、焼いた結果は、やはりこの部分は同じように膨れた。本体とあとから埋めた泥土の水分比率が均一でなければならないのか。

 だが、それは至難の業だろう。

 では、どうするか?

 要は、毛細管現象が生じないようにすればよいはず。

 完璧な石膏取りをして、合わせ面に寸分も隙間がないようにすればいいのか。

 まだまだ試行錯誤が必要なようだ。

その6 荒れる石膏

 

 型取りした石膏がボロボロのお肌に!

 なぜ??

 原因は明らか。

 サンエス石膏のホームページに“石膏型作成の基礎”というのが載っていて、「混水量は一定ですか」というのから始まって8つのチェックポイントが挙げられている。

 それによると、石膏は一応30分で固まるが、完全に水和反応が完了するまでの“養生”として、乾燥しない低温の場所での2時間が必要。

 養生後、今度は逆に、速やかな乾燥が大切で、最適は45℃の通風である…云々。(こうしないと水和の完了後、石膏型に残った余剰水に石膏の結晶が溶解・再結晶を繰り返す“戻り現象”を起こし、強度低下の原因になる、とか。)

 これを愚直に受けて、さっそく片面分の石膏取りができたものを、2時間後に風呂場に持っていき電気ファンヒーターの風をがんがん当てて乾燥させた。

 そうしてカラカラに乾かした型と合わせて、残りの部分の石膏取りをした、というわけ。その結果があの無惨な肌荒れの石膏である。

 当たり前だ。

 カラカラに乾いた石膏型に合わせてもう一方の側の石膏を流し込めば、いくら正確な混水量にしてあっても、そのカラカラの片割れに水分を吸い取られて、本来の混水量はどんどん下がっていってしまったはずだ。

 それでボロボロになっていってしまったのだ。

 教訓。石膏型はすべての型が取れるまで、あわてて乾かしてはいけない。


 手芸