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皇后杯・天皇杯を観る


 全日本ソフトテニス選手権大会(皇后賜杯・天皇賜杯)を観に有明コロシアムに。

 有明のテニスの森に来るのは久しぶりだ。かつてはたびたび試合しに来ていたけれどコロシアムは初めて。そもそもチケットを買ってテニスを観戦すること自体がはじめてだ。だんだん自分にとって、するスポーツから観るイベントにシフトしてきているということか。    ☞


 

 自分のようななまくらにとっては雲の上の世界だが、腕に覚えのある選手にとって全日本選手権はアジアオリンピックなどとともに究極の目標だろう。

 出場者は男女それぞれ200名弱。もちろん誰でも出られるわけではない。例えば全国社会人大会やインカレ、インターハイのベスト16、各県大会上位2ペア…。出場するだけでもえらいことなのに、この大会で優勝するためにはトーナメントを3日間で9試合勝ち抜かなければならない。

 国際大会で6個もの金メダルを獲った高橋乃綾が、金メダルより国内で勝つほうが難しいと言っていた。国際大会ならある程度対策がしぼれるけれど、全国大会にはどんな伏兵が出てくるかわからない。現に有力選手が早くに高校生に足をすくわれるといったケースもある。

 今日は3日目最終日の準決勝・決勝。なんと、先般のアジア選手権の代表選手たちも多くが姿を消してしまった。韓国、台湾の選手を相手にあんなに無敵の活躍だったのに。上松俊貴/内本隆文ペア、広岡宙が、そして前田梨緒/中谷さくらペア、天間麗奈、宮前希帆、前川愛生が敗退した。残っているは上岡俊介/丸山海斗ペア、内田理久、そして岩倉彩佳だけ。

 女子準決勝。

 岩倉彩佳が高橋乃綾の妹 高橋きずなのペアで勝ち上がってきた。昨日の準々決勝で対戦したのは前田梨緒/中谷さくら。スコアを見ると、G1-3からフルゲームとなりファイナルは7-5という大激戦だった。

 (ちなみに先のアジア選手権の代表予選会の決勝で岩倉/偲は前田/中谷にG3-0から逆転負けして、前田、中谷、岩倉が代表になり偲は選ばれなかった。)

 岩倉/偲の対戦相手は浪岡菜々美/久保晴華。

 浪岡はシングルスの大会で優勝を重ねている選手。久保は去年の世界大会代表にも選ばれた選手。

 引退してしまったが高橋乃綾推しだった私としては是非 妹の偲に勝ってもらいたいものだ。(乃綾はあれだけ多くのタイトルを取ったのに、この皇后杯だけは三たび決勝に進みながらいずれも準優勝に終わった。最も充実していた20,21年度にコロナ禍で大会が実施されなかったという不運も…。) 

ライブ配信の動画もあるよ .
ライブ配信の動画もあるよ .

 岩倉は乃綾とのペアで、乃綾のラストチャンスだった昨年のこの大会の決勝で敗れている。その無念を忘れてはいないだろう。

 3千人の大観衆。こんな雰囲気は国内ではこの全日本の準決・決勝くらいだ。経験したことのないようなこの大舞台で、偲は姉の心残りを晴らすことができるだろうか。

 試合開始。浪岡の果敢な攻めが目立つ。カットサービスとともにネットに詰め寄る。ストロークも振り切って伸びのあるシュートが深い。対する偲はいつものような相手コートに叩き込むようなショットが見られない。このハードコートのサーフェイスでは、やみくもの強打は功を奏さないと判断しているのか、中ロブ的な球の組み立てがほとんど。それにしても浪岡に比べて浅いような気がする。それを読んでか、久保のポジションが深い。久保のスマッシュ。第1Gを取ったものの続くゲームは3-0から逆転されてしまう。その後も岩倉にも偲にもミスが出てGカウント1-3。掌が汗ばんでくる。

 だが第5Gあたりから思い切りが出てくる。偲のショットも振り切れてきて次第に主導権を握れるように。二人のネットプレイも冴えてきた。逆転。G4-3。ラリーと目まぐるしいネットプレイの応酬。最後は後ろに下がった久保のカット気味の返球に岩倉がすかさず前に詰めてドライブボレー。飛びついた浪岡の返球が大きくラインを割る。ゲームセット。岩倉/偲、決勝へ!

  準決勝の2ゲーム目は 天間美香/左近知美の日体大学生ペア 対 長谷川憂香/辻倉奈津の実業団ペア。長谷川/辻倉は、ディフェンディング・チャンピオンでアジア選手権金メダリストの天間麗奈をフルゲームのすえ破って勝ち上がってきた。天間美香はその麗奈の姉。(もし麗奈が勝ち上がっていれば姉妹対決になって、これは2年連続の準決対決だった。)

 美香は麗奈と同じタイプの後衛といっていいだろう。長谷川/辻倉、はたして同様の戦いができるか。

 美香/左近は、麗奈(ペアは中谷さくらの妹 ももこ)が敗れたゲームを見たか(もちろんこのゲームの勝者と対戦することになるのだから)、見るタイミングを逸していたのなら妹からどんな戦いだったのか聞けただろう。十分対策は練れただろうか。

 はたして試合は終始天間/左近のペースで進む。天間のシュートが深く、左近のポイント率が高い。長谷川/辻倉は単発のポイントはあってもつまらないミスもあって試合を組み立てられない。流れが変わることなく、G5-0で天間/左近が決勝に。

 

 男子準決勝2試合を挟んでいよいよ女子決勝。

 昨年度の決勝 高橋乃綾/岩倉 vs 天間麗奈/宮前の対戦が 高橋偲/岩倉 vs 天間美香/左近 とバージョンを変えて再現されるかのようだ。

 昨年は絶好調の天間/宮前がペースを掴んだまま押し切ったが、さて、今年の戦いはいかに。がんばれ偲、岩倉!

  試合開始1ポイント目から偲の見事なスマッシュ。落ち着いている。ネットプレイも冴えて、天間/左近につけ入る隙を与えない。ダブルフォワードの並行陣、お互いの前後を適宜入替える雁行陣、ダブル後衛からチャンスと見るやふたり同時にすべるようにネットにダッシュする。フォーメーションを自在に変えて相手ペアを翻弄。岩倉の後衛ポジションからのスマッシュ、偲の強烈なシュートが炸裂する。ゲームの主導権は終始 偲/岩倉のものだ。3度のデュースで天間/左近がアドバンテージを取れたのは1度だけ。

 1ゲームも渡さないまま第5G。マッチポイント。岩倉のカットサービス。ネットに詰める。ハイボレーが左近のラケットを弾く。偲/岩倉 優勝! どん北(どんぐり北広島-偲/岩倉の所属する地域密着型のチーム)テニスのエッセンスが詰まったような快心のゲームだった。


 この日の試合はライブ配信されていた。決勝戦には実況がついて、その解説者に高橋乃綾が。優勝が決まったふたりが真っ先に実況席の乃綾に手を振った。自らはついに取れなかった賜杯を7歳違いの妹と元ペアが獲ってくれて嬉しそう。


レストランはないので弁当持参
レストランはないので弁当持参

  男子準決勝。

 法政大 橋場柊一郎/菊山太陽 対 日体大 片岡暁紀/黒坂卓矢。

 片岡ペアは今年の、橋場ペアは昨年のインカレチャンピオン。橋場は今年のインカレ シングルスも獲っている。4人ともナショナルチームの選手で、遠からず国際試合の日本代表になるに違いない。

 学生らしいスピードとパワーの応酬。ともに前衛のカットサービスでダブルフロントに。第5Gまでサービスキープ。第6G、第7Gでお互いにサービスブレイク。橋場/菊山のG4-3。第8G、菊山のあざやかなボレー、そしてスマッシュ

が決まる。このゲームを5-3で取って、橋場/菊山が決勝へ。

 前日 準々決勝の模様もライブ配信されていた。第1シード内本隆文/上松俊貴(いうまでもなく先々月のアジア選手権の金メダルペア、上松は昨年も含め既に4度天皇杯を制しているディフェンディング・チャンピオン)と橋場/菊山が対戦。橋場/菊山はG0-4となった第5G、それまでの雁行陣を並行陣に切り替えてこのゲームを9-7で取り、続く3ゲームも連取。ファイナルに入って3-6とトリプルマッチポイントとなるが、またも驚異の粘りを見せ、最後は10-8で勝利。前半でいつ心が折れてもおかしくないような展開だったが、8回ものマッチポイントをしのいで最後までひるまずあきらめない見事な戦いぶりだった。


 男子準決勝2ゲーム目。矢野颯人/内田理久 対 上岡俊介/丸山海斗。シード同士の順当な勝ち上がりか。典型的な並行陣 対 雁行陣。実力者同士のこういう対戦は面白くなりそうだ。

 矢野/内田のネットプレイ、上岡の強打に丸山の堅い守り。決まったかと見えたショットも拾われる。一進一退の攻防。とうとう決着はファイナルに。

  見応えのある攻防に観客の万雷の拍手。ラストの2本、上岡の技ありショットがミスをさそって上岡/丸山 決勝へ。

  男子決勝。社会人プロ上岡/丸山 対 学生橋場/菊山の対決に。

 抜きつ抜かれつ息詰まるような攻防。お互いの前衛の守備範囲が広く、また後衛のコートカバリングが素晴らしい。

 橋場の思い切りのいいシュート、上岡の絶妙の切り返し。菊山の切れのある動き、丸山の読みの深さ。迫力のあるラリーが続き、会場が何度もどよめく。

 決着はとうとうファイナルゲームへ。

  菊山、丸山 両前衛が躍動する。

 橋場ペアが3-1とリードすれば、上岡ペアが4-5と逆転。そして5-5で菊山のスマッシュ。このファイナルだけで4本目のポイント。

 マッチポイント。橋場の回り込んで振り切ったシュートが上岡の足元を抉る。体勢を崩しつつかろうじて返したもののボールはサイドラインを割る。ゲームセット!橋場/菊山 天皇杯優勝!リスクを恐れず信念を貫いた思い切りが引き寄せた勝利だったか。

 やはり生で見る試合はいい。

 女子の3試合は初めの準決の他はワンサイドだったけれど、決勝では“どん北”テニスの真髄を見ることができた。高橋乃綾も中本裕二監督も賜杯獲得の結果はもちろんだが、試合内容にも大いに歓喜したことだろう。

 男子3試合はどれも素晴らしい内容だった。ソフトテニスならではのエッセンス-魅力を満喫した。ハードコート特有のボールが繋がっての前・後衛の躍動。ボールもガットも硬式のようには弾けず当てただけでは生きた球にはならないからフルスイングしなければならない。また逆にカット、ツイストのような多彩なショットが随所に繰り出される。変化に富んだ攻防。

 観るスポーツとしてももっと人気があっても不思議はないのになあとつくづく思った。

 (3千人の観客席は満杯、ライブ配信は2万人近く、だったそうだけれど、翌日の新聞スポーツ欄にはまったく載ってないんだよなあ…)



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