· 

熱闘❢ 門慶の秋 - 団体戦

 

 門慶(ムンギョン)アジア選手権はいよいよ国別対抗戦がスタート。

 男女とも個人戦で目覚ましい快進撃。期待はいよいよ昂まってくる。

 だが、これまで金メダルを一つも獲れていない地元 韓国、ミックス一つにとどまっている台湾も目の色を変えてくるだろう。日本、はたして個人戦の勢いのまま突っ走れるか。     ☞

 

 女子準決勝、対台湾戦。

 トップに出たのは天間麗奈/宮前希帆。天間は個人戦ではシングルスとミックスのみでダブルスにはエントリーしていなかったが、このふたりは昨年度の全日本選手権で皇后杯を獲った相性抜群のペアだ。

 対するのは黄詩媛ファン・シュエン/徐巧楹シュ・チャウインダブルスでは準決勝で敗れはしたものの前田/中谷と大接戦を演じた銅メダルペア。天間はミックスで黄に敗れている。

 

 初手から天間が前衛・徐のサイドを抜く。宮前がレシーブで突っつく。頭を越すノータッチの中ロブ。

 前衛を釘づけにしてにほとんど仕事をさせず、黄にも勝負のショットを打たせず、あっという間にG3-0。ここまでなんと1ポイントも与えていない。

 そのまま流れを渡すことなく第4,第5Gを連取。G5-0で完勝。計5ポイントしか与えなかった。日本1勝!

  二番手のシングルスには岩倉彩佳。

 対戦相手の江旻育ジャン・ミンユ昨年の世界選手権の銅メダリスト。

 岩倉、第1Gから果敢にネットへ。5-3。

 一進一退でGカウント2-2。第5G、岩倉のサービスが冴えレシーブミスを誘う。G3-2。

 第6G。3-2のマッチポイント。ツイストのレシーブが決まってG4-2の勝利!

 日本、決勝へ!

 

 日本対韓国。

 団体戦はオーダー勝負の側面もある。

 これまでの二回戦、準決勝とも日本はトップに天間/宮前、シングルスに岩倉、三番手に前田/中谷のオーダー。

 ところで準決勝の 台湾トップの黄/徐には、昨年の世界選手権の国別戦では前川/宮前が5-0で快勝しているのだ。なぜ、あえて前川を外したか?

 前々日のダブルス決勝戦のライブ映像。観客席で前田/中谷を応援する前川が手首?をアイシングする姿。拍手も左手で膝を叩いている。決勝戦でのこの映像は、当然韓国チームはチェックしているはず。それにこれまでの日本のオーダー編成。個人戦での日本選手の勢いと併せ、韓国は大いに悩まされたことだろう。これが日本チームの陽動作戦だったのかは、なんともいえないけれど ― 。

 ダブルスでの韓国勢の不振を踏まえ、韓国はイ・ミンソンをダブルスで起用するという選択肢もあったはず。だが日本のこれまでのオーダーに対して、イ・ミンソンが1勝できたとしても、残る2戦での勝目は? あれこれ悩んだすえ、イ・ミンソンはシングルスというオーダーに落ち着いたのではないか。(日本ペアにもっとも善戦したファン・ジョンミは団体戦にはエントリーされていなかったようだ。背番号は10の選手だった。)

 日本の決勝のオーダーは、トップに前田梨緒/中谷さくら、シングルスに天間麗奈、3番手 前川愛生めい/宮前希帆。もっともオーソドックスなオーダーに戻った。韓国の読みははたして当たっただろうか。結果的にがっぷり四つに組んだ対戦となる。がんばれ、ニッポン!

* 〈後記〉試合後、佐藤英宣監督は「相手のオーダーを読んで、いい形で終われるのがこのオーダーでした」と語っている。(『ソフトテニスマガジン・ポータル』9/21)

第1G後のリラックスした表情
第1G後のリラックスした表情

 韓国のトップはキム・ヨンファ/キム・ユジン。ダブルス個人戦では準々決勝(3回戦)で台湾の黄/徐に2-5で敗れているが、背番号の2,3を見る限り韓国の一番手ペアだろう。

 前田のラケットが振れている。ロブとシュートを自在に使い分ける。中谷の動きもいい。のびのびプレーしている。


 前田のロブが逆クロス深くへ打ち込まれて、キム・ヨンファがコートの外に押し出される。辛うじて返した球を、中谷がすかさずサービスラインより深くに下がって強烈なスマッシュ。

 相手を翻弄するようにして、第1~第3Gを連取。いいぞ。

 ロブで振って走らせ中谷のスマッシュや強烈なシュートで仕留める。

 つい狙いすぎてサイドラインを割る。ごめ~ん、やっちゃったあ、とでもいうように笑顔で中谷に駆け寄る前田。でも、ゲームを支配しているのは自分たちだ。

お馴染み?さくらスマイル
お馴染み?さくらスマイル

 

 

 第4Gを3-5で落とすも、勢いは止まらない。

 勢いに押された韓国ペアが自滅をくり返し、第5Gは4-1であっさり。

 

 第6G。

 またも中谷の深い位置からのスマッシュ。

 前田のショットにキム・ヨンファは対応できていない。バックアウトが重なる。打つときのバランスが崩れている。最後はとんでもなく大きくラインを割ってゲームセット。G5-1。

 日本1勝。王手!

 ちょっと脱線しますが、前田梨緒のフォアハンドというのは、つくづく独特だ。

 軟式のグリップは、普通はウェスタングリップといってラケットをフライパンのように平らに持つ。そしてこのフライパンの底にあたる面でボールを打つ。だが、彼女はフライパンをほとんど立てた、というか包丁を持つような形(イースタングリップといいます)で握り、硬式(昔)の場合はこの包丁の左側の面で打つのだが、前田は腕を返して右側の面で打つのだ。写真4→5でわかるように、インパクトのあと、直ちにラケットがかぶってボールに強いドライブ回転がかかっていると想像できる。弾道はくいっと落ち、弾んだボールはぐんと伸びてくるだろう。打ち合う後衛も、狙われた前衛もかなり戸惑うのではないか。イースタン気味に握る選手はめずらしくはないが、ここまで極端な例は稀有だろう。(写真3の腕のひねりがすごいですねえ。)

 

 第2戦。天間麗奈 対 イ・ミンソン。

 後がない韓国。個人戦のリベンジとプライドを賭けてイ・ミンソンも負けられない。彼女は聞慶の出身でもあるとか。観客席から“イ・ミンソン!イ・ミンソン!”の大合唱。


  だが、ゲームは天間のペースで進む。

 軽快なステップでショートクロスを切り返し、逆クロスをストレートにダウンザライン。左右前後に打ち分け、ストローク戦でもイ・ミンソンを圧倒する。G3-0。

 インターバルの韓国チーム。ジ・ダヨンがイ・ミンソンの太腿をマッサージしている。


 イ・ミンソンが微かに左脚をかばいながら歩いているように見える。彼女はシングルス個人戦でフルゲームを3試合、国別戦準決の対中国戦でもシングルスに出てファイナルまでもつれた。(ほかにミックス個人戦にも出場したが準々決勝で天間/丸山に敗れている。)

 脚にダメージがたまっているのか。カメラがしきりに左太腿のテーピングを映す。このテープは直前の試合までは巻かれていなかった。

 

 だがここからイ・ミンソンが最後の力をふりしぼって意地を見せる。さすがの強打が炸裂。

 第4,5Gを連取。Gカウント3-2。観客の声援が最高潮に。しかしインターバルの休憩に戻るイ・ミンソンの足取りは重い。流れは変わるだろうか。


 

 天間は慌てていない。今ここ、の一球に集中している。

 ショートクロスに落ち着いて対応。ダウンザライン。既視感を呼び起こすようなプレー。

 3-2。イ・ミンソンのレシーブ。天間の鋭く切り返したフォアハンドがクロス深くに突き刺さる。ラケットは辛うじて届いたものの返球は力なくラインを割る。G4-2!ゲームセット!

  日本優勝! 金メダル !! あっぱれ!

ラウンドガールも登場。ボクシングか?!
ラウンドガールも登場。ボクシングか?!

 おまけ。天間麗奈のフォアハンドです。実にしなやかで美しい。この同じフォームからえぐいシュート、スピードのある中ロブ、ツイストが繰り出される。天使のような悪魔のショット!? (昨年度の全日本皇后杯優勝のときのもの)

 もうひとつおまけ。前川愛生のフォアハンド。練習の一本打ちのときのもので最強振ではないけれど、特徴はよく分かる。インパクト(写真3)のラケット面が厚い ―って、まったくかぶっていない。写真5になってもほとんど面は垂直のままだ。つまりボールにフラットに力が加えられているわけですね。それにこの写真ではわからないが、なんといってもスイングスピードが速い! 前田梨緒の球がぐいっと落ちてのしかかってくるとすると、前川の球は定規で一直線に引いたように突き刺さる勢いがある。(前川の‘爆速’ショットは、動画で見ると呆れて笑ってしまうくらい凄いのだが、なぜか静止画像にするとそれほどの迫力が出ない。つまり力みがなく無駄のないスイング ― しかし女子離れしたスピードで振り切られているためだと思われる。)

 

 男子国別対抗戦。準決勝は対台湾。

 日本トップは内本隆文/広岡そら台湾は郭健群クォ・チェンチュン/余凱文ユー・カイウェン郭/余は個人戦の準々決勝で内本/上松に完敗したとはいえ、昨年の世界選手権で金メダルを取ったダブルフォワードのスペシャリストだ。(余は19年にも金メダルを取っている。)

  はたして、第1G、このフォーメーションに対応できず0-4。第2G、苦しみながらも6-4で取る。第3G、まだ対応しきれない。2-4、G1-2。

 だが第4Gから徐々にボールがコントロールされてくる。

 ネットより低くボールを落とし、ロビングで頭を越す。ポイントするごとにまるでやんちゃなガキ大将のように跳ね回り雄叫びをあげる内本、広岡。

 一方の台湾ペアは雰囲気が暗い。失点するとうなだれてそっぽを向く。お互い声をかけて鼓舞しあわないのか。


 第4Gを4-1、第5Gを5-3で取りG3-2となる。ますます内本、広岡の反応が素晴らしく、ボールコントロールも絶妙に冴えてくる。

 台湾ペアはボールを低い位置で処理しなければならないので、ネットプレーもなかなか決め球にはならない。ボレーボレーから隙を見て頭を越される。ロブを警戒するあまり重心がつい後傾ぎみになったせいか、ボレーにもミスが重なる。

 日本ペアの流れになって、第6Gを4-2、第7Gは5-3。G5-2。日本1勝!

  二番手シングルスは上松俊貴。

 台湾は張祐菘チャン・ヨソン

 上松と張はこれまで何度も顔を合わせてきた。

 一昨年のアジアオリンピック、昨年の世界選手権での個人戦、国別対抗戦で対戦し、4戦とも上松が勝っている。

 今やシングルス絶対王者の上松に死角があるか。

  立ち上がりから上松がストローク戦で圧倒する。

 第1,2Gを危なげなく取る。

 第3G。張がネットプレーを仕掛けるも難なく切り返す。

 第4Gも取り、G4-0の完勝。上松から特になにを仕掛けるまでもない、わずか20分ほどでの決着だった。

 日本、2勝で台湾を撃破。いよいよ決勝へ!

決勝はもちろん日本 対 韓国。

篠原監督のスタバの紙袋は韓国への手土産? (≧▽≦)
篠原監督のスタバの紙袋は韓国への手土産? (≧▽≦)

 日本チームのオーダーは、トップに内本隆文/上松俊貴、シングルスは広岡宙、しんがりを上岡俊介/丸山海斗。

 ダブルスの2対戦は、いずれも個人戦で日本ペアが快勝した組み合わせ。オーダー成功か。だが油断はもちろんできない。個人戦と国別戦の結果が逆転した例などいくらでもある。韓国はこの決勝に敗れれば、この大会の金メダルはゼロに終わってしまう。目の色を変えて立ち向かってくるはずだ。

 

 韓国はイ・ヒョングォン/パク・ジェギュ。

 内本の目がギラギラと燃えて殺気すら放っている。

 第1G。上松2本のスマッシュ。4-1。幸先いいぞ。


 

 第2G。カットサービスとともに飛び出してくるダブルフォワードの韓国ペア。返球が浮けばたちどころに餌食になる。

 上松の球が浮く。イ・ヒョングォンのあざやかなボレー。韓国取って、G1-1。

 第3G。上松のロブが韓国ペアの頭上を越えてベースラインぎりぎりに落ちる。ボレー、内本のサービスエース。G2-1。

 

 第4G。日本ペアの返球が終始コントロールされはじめる。足元へ。韓国ペアは決定打を打てない。内本の反応が見事だ。ロブ。足元へ。すっかり翻弄している。G3-1。


 

 第5G。流れはもう完全にこちらのものだ。内本、上松のサービスが炸裂する。上松のスマッシュ。G4-1。

 第6G。内本の配球が素晴らしい。3-1。鋭いシュートがフォワードふたりの真ん中を撃ち抜く。ゲームセット!G5-1の完勝。

 日本1勝。王手!

 

 シングルス。広岡宙、決意を秘めて出場。

 シングルス起用は広岡の志願が受け入れられたものらしい。広岡は個人戦でただ一人メダルに届かなかった。その悔しさが募ってのことか。。

 対戦相手はファン・ボウン。韓国いよいよ後がない。

 

 

 

 広岡の懐の深いストローク。広岡は気負っていない。落ち着いた安定感抜群のラリー。じっくりつないだ挙句の逆を突くショット。2ゲームを危なげなく取る。


 

 シュートの打ち合いでは不利とみたか、ファンがドロップショットをつかってくる。広岡、素早く前に詰めてアプローチショット、浮いてきたボールをジャンプしてドライブボレー。度肝を抜くような気迫。

 

 ラリーが何本も続く。だが明らかに広岡のストローク力が上だ。

 G3-1からの第5G。緩急をつけたショット。サービスエース。ついに3-0のマッチポイント。

 ラリー。ここぞと狙いすましたダウンザライン、見事に逆サイドに突き刺さる。ゲームセット!

 日本優勝!金メダル !!

 

 この大会、7種目で日本選手たちは金6、銀2、銅3を獲った。すごい、凄すぎる!円熟の男子。進化驀進中の女子。間違いなく過去最高じゃね。

女子シングルス  ㊎ 天間麗奈

          岩倉彩佳

男子シングルス   上松俊貴

ミックスダブルス  天間麗奈/丸山海斗

          前田梨緒/上松俊貴

女子ダブルス    前田梨緒/中谷さくら

          前川愛生/宮前希帆

男子ダブルス    内本隆文/上松俊貴

         銀 上岡俊介/丸山海斗

女子国別対抗戦   前田,中谷,天間,前川,宮前,岩倉 (写真左から)

男子国別対抗戦   内本,上松,広岡,上岡,丸山,内田 (  〃  )

 

       あっぱれ❢

 それにつけても、今回のアジア選手権のライブ配信はよかったなあ。

 タイトルバックの映像などもなかなか凝っていて、試合が始まると複数のカメラでアングルを変えたり、プレーのスロー再生や、選手の表情のアップも映し出される。ドローンも飛んでいたな。アナウンサーと解説者の実況も。(ただのべつ喋りまくっていて、アナウンサーが“ゲームポイント!ゲームポイント!!”と絶叫し、二人声を揃えて“あぁーっ!”と叫んだかと思うと、落胆の溜息をついたりする。ちょっとうるさい。) 

 ソフトテニスでこんな凝った動画配信は日本ではまずない。

 韓国ではソフトテニスがプロスポーツとして成り立っているというけれど、観るスポーツとして採算が取れているということなのだろう。競技人口は5万人程度ともいわれていて、日本の連盟登録者45万人と比べてまるで少ないけれど、例えばフィギアスケートの競技人口なんてたかがしれているだろうが、観るスポーツとして人気があるし、プロとしても成り立っている。日本のソフトテニスはなぜマイナーなままなのか。(オリンピック種目でないから、ともいわれているが、相撲、それに以前の野球だってそうではないか。)

 今回の選手たちの活躍は、日本のマスメディアではまったく報道されない。国別対抗で男女が金メダルをとった翌日の浅屁新聞のスポーツ欄には、東大が明治に0対10で敗れたという六大学野球の結果なんぞがスコア付で載ってるというのに ―。

 下手くそなりに自分が何十年もやってきたスポーツだからこそ、その駆け引きや勝負のあやが分かるところもあるんだろう。でも一般の人がただ観るだけだって十分迫力があって、なかなか見ごたえのあるスポーツだと思うんだけどねえ…。 

 

 来年9~10月、愛知でのアジア競技大会にはソフトテニスも実施される。

 動画の配信はスポンサーの関係等々があって難しいのでは、などという情報も。う~ん、名古屋まで観に行くかなあ…。