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耳掻と簪

 

 骨董市で手に入れた象牙の耳掻とトンボ玉で簪を作る。新たに出来あがった“る”の髪飾りとして。

 簪が耳掻を兼ねているのは、江戸時代の奢侈禁止令の抜け道として実用品の体をとったのだとか、滅多に洗髪もかなわない結髪の頭皮を掻くのに具合がよかったからだとか、いろいろ説があるらしい。でも、いまだにその名残が引き継がれているのが不思議。  ☞

 

 

 

 象牙は堅い。鉄ではだめで、ダイヤの粉のやすりでトンボ玉の穴に嵌るように削る。けっこうな労力。

 

 しかしどうして象牙なんかで耳掻をつくったんでしょうねえ。写真右の数本はまとめて売られていたもので、細工の削り跡がはっきり残るような粗いつくり。根付のような職人芸とは比べものにもならない代物だ。楊枝を兼ねた‘消耗品’だった? ― まさか。

 まあ象牙といえば今では取引もできなくなっているけど、かつては印鑑なんかに普通に用いられてましたね。琴や長唄をやっていた母の琴柱や爪・撥も象牙だった。

 

 耳垢を取る必要は本来ないらしいが、耳をほじるのには万人に通じる快感があるに相違ない。

 耳の掃除を生業とするのは明治からあったそうで、そういえば10年くらい前?耳掻きエステに入れ揚げた男が従業員の女性を殺しちゃったという事件がありましたねえ。たしか死刑を審理する初めての裁判員裁判だったのでは。

 

 書評を見て買ったまま積読状態になっていたマンガ。思い出して引っぱり出して読んでみました。膝枕で耳掻きをしてもらった男や女が、改心したり恢復したり一念発起したり、ハッピーになるはなし。なかなか面白うござんした。