梅雨明け、間近? この夏はじめてのセミの合唱を聞いた。
夏のうたといえば、ガーシュインのサマータイム。
ひところ、このカバーの蒐集に夢中になった。とにかく他に並ぶものがないほど、バリエーションに富んでいるのだ。
「ポーギーとベス」というオペラのなかで歌われる子守唄で、メロディーも歌詞もきわめてシンプル。歌詞は訳せばこんな感じか。 ☞
夏 そう 暮らしは楽さ
魚は跳ね 棉は高々と繁る
おまえのパパは金持ちで
おまえのママはべっぴんだ
だから 坊や もう泣くのはおやめ
そんなある朝
おまえは高らかに歌いながら
翼を広げて大空に飛び立つだろう
でもその時が来るまで
なにも心配はいらない
パパとママがそばにいるのだもの
とまあ、ごくのどかな歌なのだが、実は「ポーギーとベス」はそんなお気楽な雰囲気の筋立ではない。
舞台は貧しい黒人居住区。主人公ボーギーは足の不自由な乞食で、人妻ベスと恋仲になり、その夫クラウンを殺してしまう。だが、ベスは麻薬の売人にそそのかされてニューヨークに行ってしまい、ポーギーは山羊に引かせた車でその後を追う。
サマータイムは、この陰惨なストーリーを対比的に際立たせるための歌なのだ。導入で美しく歌われるほか、劇の様々なシーンでも歌われる。人殺しの後にはメロディーが物悲しく流れる。
サマータイムをはじめとする曲が、ジャンルを超えて実に多くのミュージシャンに愛されているのは、クラシックとポピュラーミュージックを横断するガーシュインという作曲家の資質によるところ大だろうが、とりわけ黒人ミュージシャンとって、非常に大切なものとなった。
作曲にあたって、ガーシュインが実際にチャールストンに行って黒人音楽を研究したというのはよく知られたはなしだが、黒人たちに愛されるわけはそれだけではない。
初演された1935年は、黒人がオペラの主役に立つなど考えられもしなかった時代だ。だが、これはそれを可能にした画期的な作品だったのだ。
数多くカバーされる曲、たとえば "枯葉"。これなども様々なジャンルのミュージシャンに、それぞれの唱法・スタイルで歌われ演奏されるが、"サマータイム"のミュージシャンたちに比べてしまうと、どこか通り一遍な感じがする。アルバムをまとめるのに手ごろな1曲として " まあ、枯葉でも…" てな感じで選んだ、みたいな。(サラ・ヴォーンのカバーはものすごいけれど、あくまで特別な思い入れもなく素材として選んでいるというべきだろう。)
サマータイムは、もともとがシンプルな旋律だという理由もあろうが、どんなに思いっきりのアレンジがされていても、なによりも " 俺たちの歌だ " というような、このうたに対する愛情やリスペクトがひしひしと感じられるように思う。それは黒人にかぎらず、例えば、あのジャニス・ジョプリンの圧倒的な歌唱などが端的にそれを示している。
集めたカバーは、CDRに入れただけで120あまり。
そのあともどんどんパソコンに保存したのがどのくらいあるだろう。いちいち取り込むのが面倒になってCDを買ったままになっているのもあるし…。
で、そのなかから厳選して2枚のCDRに編集したのが、現時点では以下のとおり。
第1巻
バーバラ・ヘンドリックス クラシック
白鳥恵美子 Jポップス
ナラ・レオン ボサノバ
ブラザース・フォア フォーク
ジュリー&ザ・ペースメーカーズ リバプール
プラターズ ロックンロール
東京スカパラダイスオーケストラ スカ
憂歌団 ブルース
キース・エマーソン ロック
ジャニス・ジョブリン ロック(ブルース)
青江三奈 演歌・ジャズ
マヘリア・ジャクソン ゴスペル
エラ・フィッツジェラルド
& ルイ・アームストロング ジャズ
ケイコ・リー ジャズ
サラ・ヴォーン ジャズ
ハービー・ハンコック
& ジョニ・ミッチェル
& スティビー・ワンダー ジャズ,フォークロック,ソウル
モンゴ・サンタマリア
& ディジー・ガレスピー ラテン・ジャズ,ジャズ
アル・ジャロウ ジャズ
アート・ペッパー ジャズ
第2巻
シャルロット・チャーチ クラシック
オリビア・ニュートンジョン ポップス
アンジェリーク・キジョー アフロ・ポップス
五輪真弓 Jポップス
オスダルヒア キューバ
ウィリー・ネルソン
& レオン・ラッセル カントリー
ビギン Jポップス
サム・クック ソウル
マイケル・ボルトン アダルト・コンテンポラリー
ビッグ・ママ・ソーントン リズム&ブルース
ビリー・スティワート ソウル
レイヴンス リズム&ブルース
ロニー・ジョンソン ブルース
クラレンス‘ゲートマウス’ブラウン ブルース
オハイオ・プレイヤーズ ファンク
ランバート,ヘンドリックス&ロス ジャズ
ヘレン・メリル ジャズ
レイ・チャールズ
& クレオ・レーン ジャズ
ジャシンサ ジャズ
もちろん、涙をのんで外したものも。
例えば、一旦は入れていたんだけれど、ポール・マッカートニーとか、マイルス・ディビスとか…。
これ以外のジャンルでも、カンツォーネのミーナとか、ファドのアマリア・ロドリゲスとか、フレンチのパトリシア・カースなども。
森進一や桂銀淑(これはちょっとねぇ…)なんてのもあるな。
あと、You Tubeにしかないので取り込めないけど、ほんとうに素晴らしいのがノラ・ジョーンズ。(TV収録だったらしい。)これはなんとかゲットしたいなあ。
第3巻も作れなくはないかな。