花見は川辺がいちばん。
だが目黒川はいただけない。川岸にフェンスがあっては興ざめだ。それに人が多すぎる。交通規制の係員に急かされながら歩いて何がおもしろいか。
密かなお気に入りはAB川。両岸に約500本。鳥が啼き、川には魚が泳いで川底が見える。 ☞
靖国の桜の満開が報じられてから寒が戻り、一週間たってやっとこちらもほぼ満開になった。
幸いまだそれほどには知られていないようで(それでも外国の観光客が宴席をひろげている)、川べりを自転車でゆっくり走らせることもできる。
無粋なぼんぼりがぶら下がり、焼きそばやフランクフルトの露店も出ているが、それが途切れたところでもまだ見事な桜を見ることができる。
川の桜は枝を川面に伸ばす。
川辺に腰を下ろして中食。見上げるまでもなく、目の先にたわわに咲いた桜、桜。
古今集からJポップまで、桜に特別な思い入れをするのはなぜか。
一瞬の幻のように一斉に咲いて一斉に散る。(もっともそれはクローンであるソメイヨシノに顕著なので、様々な桜はそれぞれの時季に咲く。)
今年散っても、年が巡れば花は満開に咲くだろう。
だが、自分はまた来る春にその花を見ることができるだろうか。
そんな感傷めいた思いを抱くからだとも考えられるけれど、それなら桜でなくとも(例えば、我が家の庭のハナミズキでもアジサイでも)同じはずではないか。
なぜ、桜なのか。
謎である。