忍 法 総 覧

     ― 「伊賀の影丸」全9話に登場する忍法のすべて

* ただし‘含み針’と‘変装’は多くの術者が行うので、原則として掲載しない。

 

影丸の術

 まずは、影丸が駆使する術から ― 。

 

木の葉がくれ

 しびれぐすりをしみこませた木の葉が舞う影丸の代名詞的な術。でも影丸自身は大丈夫なのか?


 

木の葉がくれ

 同じ‘木の葉がくれ’と名付けられているが、こちらは姿を隠すときの術。木の葉の色が異なると影丸自身が解説している。

 

 

 

 


 

 

木の葉火輪

 影丸の必殺技である。

 この術自体で致命傷を与えるシーンはなく、錯乱状態に陥った敵に手裏剣等でとどめを刺すことが多い。

 

 

伊賀十字打ち

 手裏剣の技。‘闇一族の巻’でのみ見せた。‘由比正雪’で左近丸が、‘地獄谷金山’で月之助も駆使している。


 

たたみがえし

 たたみをひっくり返して攻撃を防御する。‘土蜘蛛五人衆’‘地獄谷金山’で見せた技。

 


 

(リバーシブル忍び装束)

 忍法ではないけれど、影丸の忍装束は裏が白くなっているらしい。‘由比正雪’で雪にまぎれて戦った。

 

各巻の忍法

 

1.若葉城の巻

  

 A.公儀隠密

 

 

(吹き矢) - 大八

 シリーズ中、含み針の類(毒針も含む)は頻繁に登場するが、一撃で相手を倒すのはこれのみ。みごと阿魔野邪鬼をしとめたが、一本しか口中に含めないという弱点がある。そのため復活した不死身の邪鬼にリベンジされてしまう。

 

 

(蹴り刀) - 彦三

 地面に刺した刀をとっさに蹴りあげて突き刺す。見事な技。

 しかしこれも一旦しとめた邪鬼に、二度目は封じられてしまう。

 

 

 

(かわし身) - 彦三

 後ろにも目があるかのように楽々と攻撃をかわす。戦闘能力はきわめて高い彦三であったが…。

 

 

(こうもり操り) - 彦三

 こうもりを自在にあやつる彦三。邪鬼を篭絡するが、あっさり見逃してしまう。ここで一気に片を付けちゃえばよかったのにねえ。

 

 

 

 B.甲賀七人衆

 

 

(不死身) - 阿魔野邪鬼

 致命傷を負っても3時間で復活する。200年生きているとも。

 だが、‘由比正雪の巻’で影丸に敗れ、影丸に“不死身といえどもいま からだをやかれて灰になればふたたひ生きかえることはむりだろう”といわれている。その際に完全に命を絶たれることがなかったことから、これを機に影丸に対する戦意をなくし、‘邪鬼秘帳’では陰ながら影丸を助ける。

 

(カメレオン) - 十兵衛

 カメレオンのように草や瓦に同化する。しかし影丸に血を吹き付けられたことで隠れることができなくなる。姿を隠せなければ、さしたる戦闘能力はなく、あっさりと敗北。自ら舌を噛み切って死ぬ。

 

(トリモチ唾) - くも丸

 トリモチ状の唾で目を塞いだり、蜘蛛の巣で絡めたりする。だが、影丸に木の葉をくっつけられて役にたたなくなり敗北。

 これは山田風太郎の「甲賀忍法帖」がオリジナル。ほかにも風太郎忍法帖をヒントにしたものは多数あるようだ。


 

(山犬寄せ) - 犬丸

 山犬を呼び寄せて襲わせる。

 犬のように走り、鼻も利く。だが、水に弱く、隠密のひとり右京に水中に引きずりこまれて敗れる。

 

 

 

 

(鉄のからだ) - 五郎兵衛

 

 刀の刃もとおらない硬いからだ。そのからだそのものが凶器になる。

 しかし、やはり水が苦手で、影丸に不意を突かれて水に引きずりこまれて溺死。

 

 

 

(分身の術) - 半太夫

 

 斬りつけるたびに分身が増殖する。

 その時点ですでに催眠術にかかっているのだという。

 この術にかかりかけた影丸は自刃させられそうになるが、かろうじて‘木の葉がくれ’で逃れる。

 その後、影丸がこれを逆用し、半太夫は姿が鏡に映っていることに気付かずに自らに術をかけてしまい自刃してしまう。(鏡によって自らに催眠術をかけてしまう、というパターンは‘七つの影法師’でも夢麻呂が影法師 魔風にやられてしまう。)

 

(黒い水) - 半助

 水中の戦いで水を真黒にして視野を奪って仕留める。

 だが、水中にいられる限度が半刻(1時間)であることを知られ、水面に火を放たれてとうとう息苦しくなって水上に飛び出したところを仕留められる。

 

C.姫宮村

 邪鬼をはじめ特異体質を持つ甲賀七人衆の出身地の者たち。様々な特異な身体機能を持つが、必ずしも戦闘のためというわけでもない。

 

(守宮吸盤) - (不明)

 体じゅうが吸盤だというが、服を着たままどうしてくっつけるのか? なぞである。技を披露したのみ。

 

 

 

 

(ゴムまり身体) - 与作

 ゴムまりのように弾む身体。

 影丸に好意を持ちながらも、戦わねばならなくなり敗れる。

 

 

(水面歩行) - 民部

 水面を素足で歩ける。

 陸の上ではからっきしだめ、と与作にいわれてしまう。戦闘シーンなし。

 

 

 

 

(地中自在) - 地虫

 土の中を自在に動き回ることができる。

 

 

2.由比正雪の巻

 

 A.公儀隠密

 

 

くも糸渡り - 左近丸 

 全シリーズ中でも、もっともカッコいい必殺技のひとつだろう。これは痛そうだ。

 前巻では‘木の葉がくれ’以外はそれぞれの術にネーミングはされなかったが、ここではじめて“忍法 くも糸渡り…”と術者からの宣告がされるようになる。

 (でもこんなにがんじがらめにできるなら、わざわざ独楽なんか使わなくても刀のほうが簡単だと思うのだが、ま、そういうことを言っちゃあいけませんな。)

 しかしこの術は義手の如月文兵衛には通用しなかった。

 

 

(ムササビ飛び) - むささび

 マントのような衣装を羽織って、2町(220m)を飛ぶ。

 陰流忍者 弥九郎の‘忍法 影ぬい’で仕留められてしまう。(しかし、間際に毒の含み針を命中させて相打ちに持ち込む。)

 

空蝉 - 岩石入道

 仕留めたと思ったら、その相手はセミの抜け殻のように中身が空っぽだったという、どこか岩石入道のキャラクターにふさわしいとぼけた忍法。本体はやはりセミのように地中にもぐっていて、虚を突いて敵 鉄扇を仕留める。

 

 

(獣寄せ) - 獅子丸

 猪、山犬などの獣(ウサギもいたな)を呼び寄せて敵を攻撃させる。

 

血しるべ - 獅子丸

 鏡月の忍法 水鏡に惑わされて目を潰された獅子丸が、死に際に血を吹き付ける。その血は洗いおとすことができず、集まってきた山犬や鷹が獅子丸を殺した鏡月を襲う。

(獣に襲われた鏡月は致命傷は負わなかったものの、左近丸らに見つかって仕留められる。)

 

 

 

(独楽綱断ち) - 左近丸

 谷底に落とされながら、最後の術として独楽を投じ、敵 五十鈴大作が立っていた綱を断って相打ちに持ち込む。

 

 

比翼の術 - 源心

 飛びながら同時におとりとなる身代わりも飛ばす。

 一度はみごとに決まったが、影丸に変装した夜叉王に傷を負わされてからの三度目は見破られ、仕留められてしまう。

 

 

B.陰流忍者(由比正雪の一党)

 

 

 

 

幻火術 - 幻心入道

 火の幻覚を現出して混乱を呼び起こす。

 しかし盲目の左近丸には通用せず、その縄術にがんじがらめにされたうえ‘くも糸渡り’に仕留められる。

 

影ぬい - 弥九郎

 相手の影を攻撃するだけでダメージを与える。

 この術でむささびを倒すが、猛毒の含み針を受け相打ちとなってしまう。

 

(分身鉄球) - 太郎坊

 分身のそれぞれから鎖につながった鉄球が投げつけられる。だが、実際に木を抉るのが本物だと影丸に見定められ、‘木の葉がくれ’で眠らされる。この時はとどめを刺されることはなく、終盤に再度影丸と対戦するがあっさり敗北する。

 

 

水鏡a - 霧雨鏡月

 水や雨を利用して様々な術を使う。

 ここでは、雨が鏡の役目をして、追手が同じところを堂々巡りさせられる。

 

(鉄扇) - 鉄扇

 鉄の扇が蝶のように舞って相手に切りかかる。

 岩石入道の忍法 空蝉にかわされて敗れる。

雷神 - 如月文兵衛

 義手が生きもののように動き、これを外すと刀剣が現れる。また爆発を呼び起こしたりもする。岩石入道はかろうじて‘空蝉’の術で逃れる。

 左近丸もその縄術が通用せず苦戦するが、左近丸に誘導されて毒蛇に噛まれて倒れ自爆する。(その際に仲間に合図を送ったことが、左近丸の最期につながった。)

 

水鏡b - 霧雨鏡月

 浅い川のようなわずかな水のなかに姿を沈め、相手を撹乱する。姿を見せたかと思うと虚像である。そして思わぬところから攻撃して獅子丸を仕留める。(だが獅子丸の‘血しるべ’によってダメージを受けてしまう。)

 

水鏡c? - 霧雨鏡月

 所望したわずかな水から幻覚を呼び起こす。

 しかし、盲目の左近丸には通用せず、あっさり切り捨てられてしまう。

 

 

(鈴まぎれ) - 五十鈴大作

 鈴の音をあちこちに響かせて混乱を誘う。聴覚や気配をたよりに行動する左近丸の感覚を狂わせて崖から転落させる。

 だが、左近丸が最後に放った独楽によって立っていた綱を断たれて墜落し、相打ちとなる。

 

 

 

(鎖分銅浮遊) - 岩見幻斎

 鎖分銅を自在に使う。

 しかし伊賀の公儀隠密との戦いでこの得意技を披露する見せ場はなく、終盤で馬の群れを暴走させた影丸に斬り倒される。

 

 

こがらし - こがらし竜五郎

  相手に火を見せて幻覚の暴風を体感させると同時に手裏剣の嵐を浴びせる。幻覚と見切った影丸には通用せず重傷を負う。

 

(金剛夜叉明王幻像) - こがらし竜五郎

 お堂に火を放って金剛夜叉明王の幻を現出する。火の中、ぎりぎりまで耐えた岩石入道に見切られて斬られる。だが、岩石入道も全身にやけどを負い息絶える。

 (紙吹雪) - 夜叉王

 斬りかかる源心に紙吹雪を浴びせて逃れる。これ自体はさほど大した術ではなかろう。この夜叉王という忍者は終盤になって唐突に登場する。正雪方のコマが足りなくなって急遽配されることになったのか?

 だが、この夜叉王の特技は変装である。影丸に化けたのを、源心も見分けられず敗れるきっかけとなった。

 さらに、阿魔野邪鬼も影丸と思い込んで死闘となり、相打ちになる。(邪鬼は生き返るが、夜叉王は死ぬ。)

 シリーズ中変装は頻出するが、これは最もレベルが高いかも?

 

 

ぬのかくれ - 由比正雪

 実は忍者だった正雪が見せる術。ひるがえる布に身を隠しながら襲いかかるが、影丸にかわされる。一騎打ちとなって敗れ、切腹して果てる。(しかし当初正雪はまったく忍者らしくない。味方をも欺くカモフラージュだったのか?)

 

 

3.闇一族の巻

 

 A.公儀隠密

 

 (毒への耐性) - 村雨兄弟

 村雨兄弟5人はみな毒を飲んでも毒針を受けても大丈夫。ここで3男 数馬が言うには“おれたち兄弟は子どものころから まいにちすこしずつの毒をのんで毒にたえられるくんれんをした”そうである。うーむ、現代の科学を超越してますなぁ。よい子はまねをしないように。

 

 

(縄術) - 源太郎

 5男 源太郎が操るいかり縄には猛毒を塗ったかぎ針が多数ついている。これによって闇一族 かげろうを弱らせて敗北の原因をつくった。

 だが、この縄術も左門の‘クモしばり’によって無効にされ、捕らわれの身となってSMチックな水責めにあったりする。(その後救出されます。)

 ナナフシ - 霧丸

 背景に溶け込む4男 霧丸の術。長男 右門も駆使するが、もっとも得意とするのは霧丸のようである。

 この術でかげろうを倒し、また火炎を羽交い絞めにして毒針を打ち込むが、蓮台寺によって二人もろとも槍で串刺しにされてしまう。

 

 

花吹雪 - 右門

 長男 右門の術。幻覚による錯乱を催させる術だが、闇一族の首領 蓮台寺には致命的な効果をもたらすことはできなかった。だが、その後、蓮台寺に討ち取られた際、最期の力をふりしぼって再度 バラの花を舞わせ、トゲに紛らわせた毒針を打ち込む。これによって弱った蓮台寺は影丸との対決に敗れ自爆する。 

 

B.闇一族

 

 

うつし顔 - 土門

 数馬に毒を盛られたが、その死に際に仲間に知らせるべく地面に数馬の人相を残す。

 

 

かげろう - かげろう

 分身の術の一種。本体がどこか判然とせず相手の攻撃を空回りさせる。しかし、この分身から手強い反撃がなされるのか、というとそうでもなく、ビジュアル的なインパクトはあるものの、相手を惑わせるだけの術のようでもある。

 源太郎のいかり縄にかかってダメージを受け、霧丸に仕留められる。

ふぶき - 岩風

 なんの動作もともなわないで多くの小石が飛んでくる。単発の小石の場合は‘岩風’という。

 影丸に負傷をおわせるが、最後は影丸の策に翻弄されて致命傷を負う。とどめを刺されようとする際に、このままそっと死なせてくれと頼み、影丸は小舟に乗った岩風を放す。

 ところで、この岩風の風貌、どこかで見覚えがないだろうか。そう、白土三平の「忍者武芸帳・影丸伝」の影丸である。白土作は1959-62年にかけて出版されたから、63年から連載された‘闇一族の巻’に先んじる。つまり横山が白土をぱくったのだ。影丸が影丸を打ち負かした形になってしまったのだ。

 影丸が岩風のプライドを損なわなかったのは、このような(リスペクト?うしろめたさの?)事情があったと見るのは決して穿ちすぎではあるまい。まして、元ネタが‘影丸’である。

 ちなみに、白土の影丸が率いるのは特異な身体機能をもつ‘影一族’、影丸自身は八つ裂きにされても生き返る不死身の身体を持つ。もちろん、阿魔野邪鬼よりも早い。

 

(人影) - 人影

 相手の影に擬態して襲いかかる。月が出て影が二つになってしまたことから影丸に見破られて仕留められる。しかしその際に影丸は毒針を打ち込まれ瀕死の状態におちいる。(かろうじて数馬に助けられる。)

 

(シデムシ) - かげろう

 海老とかげろうとの二人がかりの攻撃で傷を負った数馬が、姿を隠したものの、腐った肉に集まるシデムシを放たれて居所を知られ、とどめを刺されてしまう。

 

クモしばり - 左門

 縄術つかいの源太郎を凌駕して包囲した縄がどんどん間隔を狭めていき身動きできないようにしてしまう。

 なお、村雨家の右門と紛らわしく、右門と左門が戦って左門が敗れるのであるが、それを知った岩風が“しまった 右門がやられたか?”と口走る。作者がまちがえちゃ、いかんでしょ。

 

(虫囲み) - 蓮台寺

 草むらに紛れて迫る際に四方から虫の声がひびき、集中力が乱される。ここで傷を負いナナフシの術もやぶられて右門も敗北する。(だが‘花吹雪’で毒針を打ち込んだことが影丸の勝利につながる。)

 

 

(草火降らし) - 蓮台寺

 空中に舞い上がらせた草や枯れ枝に火がついて降りかかってくる。だが、右門の毒針で衰弱していた蓮台寺は、影丸にその動きを読まれて倒され自爆する。

 

 

4.七つの影法師の巻

 

 A.公儀隠密

 

血染蛛 - 幻也斎

 二人がかりで倒された幻也斎が死に際に野火に血を浴びせると、その血が蜘蛛の形になって残る。これは一生洗っても取れなくなるそうである。

 このため、倒した幻也斎に変装した野火は、正体を天鬼に見破られて討たれてしまう。(しかし、野火が自分に変装するはずと、どうして幻也斎は思ったのじゃろか? 変装されるのでもなければこの術の意味はないんじゃないのかね?)

 

布分身 - 天鬼

 シリーズ中 分身の術はたびたび出現するが、その中でビジュアル的に最も見栄えがするのはこの天鬼の術だろう。

 しかし、他の分身の術が何もない空間に幻像を見せるのに対して、この術は布という物理的なモノが媒体になっていることが弱点になる。

 すなわち、最初の術の際には、魔風に火を仕掛けられて布は燃えてしまい(天鬼自身もここで大やけどを負う)、2度目のときは幽鬼に岩を落とされて地にへたってしまう。

 天鬼が落命することになるのも、結局この布が原因になるのだ(後述)。


 

(催眠術) - 夢麿

 催眠術も頻出する術だが、ここで夢麿が死神とかけあった対戦がもっとも見ごたえがあった。

 術をかけていたと思っていた死神が、実は夢麿にかけられていて、ついに自刃させられてしまう。

 だが、その夢麿も、終盤で鏡に映った自らの術にかかって自害させられてしまう。催眠術ってこわいね。

 

変わり身 - 夢麿

 雪風の忍法‘あげは蝶’を無効化したうえで、自身の幻像を意識させて、その背後からとどめを刺す。これも一種の分身の術だな。

 

 

布とりで - 天鬼

 布分身をやぶられた天鬼が次に繰り出した術。地に落ちた包帯を拾い集めて周囲に放つ。姿を消して迫る幽鬼をこの包帯が絡め取って、身動きできなくなったところを仕留める。

 だがその死に際に、醜くやけどを負った顔をののしられたことから、ふたたびその包帯を顔に巻いてしまう。そこには幽鬼によって猛毒がぬられており、それが天鬼の命取りになった。

 

B.影法師

 

 

火龍 - 魔風

 派手な火術を駆使する魔風。天鬼に大やけどを負わせ、夢麿を自滅させたりもするが、あっさり影丸に‘木の葉がくれ’で捕らわれて夢麿の催眠術にかけられたりもする。どこか間抜けたところがあって、最後の一人となってからの影丸との戦いぶりもいただけない。(後述する。)

 

天しぶき - 紫右近

 水を巻き上げて姿をくらませるとともに、霧を発生させ追っ手が同士討ちをしてしまうような混乱状態をつくりだす。(死神や雪風の術をやぶっている夢麿までが巻き込まれたのはいささか不可解である。)

 逃れた川に毒を流されて視力を失い、式部に討たれるも、その際に含み針を打ち込み、その後現れた幽鬼に止めを刺させる。

 

(ナナフシ) - 幽鬼

 術名は宣告されないが周囲のものに同化して姿を隠す‘ナナフシ’と同種の術。片目を仕留め、影丸にも最後まで影響するような重傷を負わせるが、天鬼の‘布とりで’に敗れる。

 

 

あげは蝶 - 雪風

 まいた紙があげは蝶となって襲いかかり意識を失わせる。この術で雷天を仕留めるも、次に現れた夢麿によって逆に自身に襲いかかるように無効化されてしまい、夢麿の‘変わり身’に翻弄されて敗れる。

火輪 - 魔風

 火の輪で二重三重に取り囲む。焦った夢麿が、姿を現わした魔風に催眠術をかけようとしたのが実は鏡に映った自身であったために、自らに術をかけて自害させられてしまう。

 その後、魔風は重傷を負っている影丸と最後に残った者どうしの戦いに臨むが、その火術を逆用され、勝負を焦って‘木の葉がくれ’に倒されてしまう。

 火術が封じられたって、杖にすがってやっと歩くような影丸となら、ふつうに戦っても勝機はあったはずだ。しかも、‘木の葉がくれ’にやられるのは二度目なのだ。お粗末である。大とりの役者としては、いささか役不足。風貌も鼻がまるくて凄みにかけるのが残念だ。

 

 

5.半蔵暗殺帳の巻

 

 A.公儀隠密(伊賀地ごく谷の忍者)

 

(ふくろう操り) - 陣内

 ふくろうの群れを操って攻撃させる。‘太郎’などと名付けているふくろう達とは意思がかよい、探索、見張など様々な役割をおわせることもできる。

 この術で、殺された太郎の‘かたきをうって’独眼房兵馬を倒す。しかし敵に囲まれた際にふくろうに攻撃させようとしたところ、多くのネズミを放たれる。ふくろうはみなそちらに向かってしまい、動揺したところを大文字冬心に水中に引き込まれて仕留められる。

 

         いそうじ

霞変化 - 伊三次

 たちこめた霞に姿をくらませる。攻撃のためではなく、退散するための術だが、独眼房兵馬の髪の毛の網に絡めとられて討ち取られてしまう。

 

 

(夜目) - 十六夜幻之丞

 暗闇でも夜目がきく能力を持つ。闇に紛れる黒夜叉の動きを見切って捕える。

 

 

(催眠術) - 天真

 捕えた黒夜叉に催眠術をかけて敵方の情報を喋らせる。

 

 B.飛騨忍群

 

(ナナフシ) - 刑部

 影丸の毒を塗った手裏剣に傷つきこの術で逃れようとする。村雨霧丸(闇一族の巻)や幽鬼(七つの影法師の巻)のように着物のままとけ込むことができるわけではないようで、そのために隠れていることがわかって火であぶり出される。最後は影丸の‘木の葉火輪’に敗れる。

 

逃げ水 - 寒月斎

 追いかけても追いかけても追いつけず、ついに姿が消えてしまう。幻を追いかけさせられるのだという。二度目に影丸に見切られ、隠密4人に囲まれて奥歯に仕込んだ毒で自害する。

 

 

(鎖鎌) - 霧丸

 ‘大車輪’‘血槍’‘からみづた’‘かぶとわり’などの鎖鎌の技を駆使する。影丸の‘木の葉がくれ’に敗れ、自ら火を放って自害する。

 

 

かげろう - 大三郎

 影丸に目つぶしと投げ縄で攻められるも、自ら火薬玉を踏み潰すことで姿をくらませる捨て身の術。だが、この術で自ら負傷し、なおも逃走するが目もみえなくなっていたため、絶壁から転落して死ぬ。

 

 

(髪網) - 独眼房兵馬

 ‘霞変化’で姿を隠した伊三次を髪の毛を張り巡らして探し出し、さらに髪の網で絡め取り仕留める。この髪は刀でもきることができない。

 

 

(火術) - 不知火大膳

 幻の火で相手を惑わせる。本当の火なら燃えるはずと影丸がはなった木の葉にしびれて捕えられる。

 天真の催眠術で情報を半ば洩らしてしまったところで、仲間の黒夜叉に殺される。

 

 

6.地獄谷金山の巻

 

 A.公儀隠密

 

 

(クモ糸絡め) - 土蜘蛛

 背負った風呂敷包みから無数のクモの糸がとびだし、まきついて窒息死させてしまう。

 またこの術で飛騨忍群のかしらを捕えてかくし金山のひみつを聞きだしたところで、シリーズ中唯一登場する女忍者‘短筒の桔梗’に撃たれて倒される。

 

 

(火術) - 嵐月之助

 火術はシリーズ中にたびたび登場するが、月之助の火術はもっとも派手な爆発を伴う。最後には究極の‘火走りの術’も。

 

火走りの術 - 嵐月之助

 敵に囲まれた絶体絶命の状況で、一か八かで仕掛ける火術。敵も倒せるが自分自身も危うい。最初の実行で自身も深手を負い、影丸らを逃すための二度目でついに自らも命を落とす。

 

 

 B.飛騨忍群*

* “半蔵暗殺帳の巻”にも飛騨忍群が登場しているが、彼らは白柄家(三十万石)ゆかりの一派であり、この巻で暗躍するのは豊臣家の残党なので異なる集団と思われる。(ユニフォームも異なる。)

 

 

 

(水中縄術) - 海豚の三次

 水中に落とされた影丸が、水中の縄術に苦戦する。辛うじて三次を仕留めるが、意識を失い捕らわれの身になってしまう。シリーズ中、影丸の最大の危機。

そうじょうべん

双条鞭 - 寒月斎

 飛騨忍群の首領。この術で早耳頑十郎を倒す。二本の鞭を操るが、それ自体は影丸が“おかしい 頑十郎のうでで これくらいのむちがさけられなかったのか”という程度のものである。しかし、実はこのむちの音で呼び寄せた毒蛇に噛ませるという術なのである。影丸にこの術を見破られ、最後の対決で敗れて金山の証拠とともに爆死する。

 

 

7.邪鬼秘帳の巻

 

 A.公儀隠密

 隠密と辻斬り浪人(邪鬼を含む)と土蜘蛛党との三つどもえの様相を呈するが、公儀隠密側にはこれといった術は見られない。

 

 B.土蜘蛛党

 

 

うず潮 - 勘助

 口から怪しい霧を発生させる。地面が動きだし、バランスを崩したところで仕留められてしまう。

 小頭五人衆の一人。他の4人はこの巻には登場しないが、次の“土蜘蛛五人衆の巻”で影丸をターゲットにして戦う。

 

 群狼花 - 幻斎坊

 土蜘蛛党の首領の術。花が舞い上がって降りかかるが、その時点では何事もおこらない。しかしこの花には山犬が凶暴になる薬が混ぜられていて、のちに山犬の大群に襲いかかられる。邪鬼はこれに消耗したところを幻斎坊に倒される。(でも邪鬼だから生き返るんだよね。)

 影丸はこの術に‘木の葉火輪’を掛け合わせてこの花を燃やして無効にしてしまう。動揺した幻斎坊は影丸との一騎打ちに敗れ、“わしの仲間がかならずおまえを殺す”と言い残して息絶える。これが次の‘土蜘蛛五人衆の巻’につながる。

 

 

8.土蜘蛛五人衆の巻

 

 A.公儀隠密

 

(毒花散らし) - 村雨十郎太

 闇一族との戦いから生き残った村雨兄弟の次男。

 催眠効果のある花で、相手の体を麻痺させ手裏剣もまっすぐにとばさせない。

 “闇一族の巻”ではこれといった術を見せなかったが、ここで毒物にもっとも精通している本領を発揮。

 

 B.土蜘蛛五人衆

 

 

 

うず潮 - 勘助 “邪鬼秘帳の巻”でも見せた術。

 

 

 

 

 

 

(水隠れ) - 竜三郎 

 池から姿が消えていくものの水中を探してもそこにはおらず、別の場に隠れる。

 

 移し身 - 竜三郎

 毒針で意識を失わせた弓彦に憑依する。憑依された弓彦は元の姿のまま竜三郎となって戦い、てっきり変装しているものと思われて仲間たちに討ち取られてしまう。

 次に村雨源太郎に毒針を打ち込んでこの術をかけようとするが、村雨家の者に毒針は当然効かず、一芝居うった源太郎に斬られて自爆する。

 

(油霧火炎) - 猿彦

 瓢箪に入れた油を口に含んで吹き出すと霧になり、ここぞという時にこれに火を点じて一気に焼き殺す。

 だが次に、長崎から取り寄せた石綿でこの術を防がれてしまい、影丸との一騎打ちのすえ討ち取られる。(石綿を着た忍者たちのなかに半蔵の姿もあった。半蔵も新しいものに好奇心があったんだな、きっと。)

空蝉 - 金目

 一旦切り捨てたと思っていた相手が再び現れるが、操り人形のように縄にぶらさがっていて、何処ともなく笑い声が響いてくる。ところが操り人形と思っていたのが実は本物で、これに騙されて頑鉄は討たれてしまう。“人だと思えばぬけがら ぬけがらだと思えばほんもの”なんだそうだ。

 

(大凧飛行) - 左京 

 雷雨のなか追い詰められるものの突如空中に逃れる。いつの間にか用意した大凧に飛び乗ったのだが、善鬼が投げ刺した刀が落雷を誘い感電死する。

 

 

(催眠術) - 金目

 全身黒装束で目だけ出しており、その目を見つめてしまうことで術中にはまり、その動きがだんだん速くなって、ついには見えなくなるほどになる。

 この要諦を知った影丸は正面からの戦いを回避することでこの術を防いで‘木の葉火輪’で翻弄し、最後に相打ちを試みた金目を討ち破る。

 

 

 

9.影丸旅日記の巻

 

 A.公儀隠密

 

 

 

鳥よせの術 - 栗林伝蔵

 鳥を呼び寄せて襲わせる術。ここではカラス(?)だが次のシーンではフクロウなので、鳥の種類は問わないようである。

 

 B.葉山藩の忍者

 

 

 

火走り - (不明)

 葉山藩を探っている最中に影丸を襲ってきた多数の忍者のうちのただひとり生き残った者の術。

 ‘火走り’といわれているが、‘地獄谷金山’で嵐月之助が駆使した凄絶な‘火走りの術’とは異なるようである(術者に危険は伴わないようだ)。

 この戦いで影丸は‘木の葉がくれ’で光る木の葉を初めて用いている。

 

 

(分身の術) - 銀之丞

 御神楽山の秘密を守る銀之丞の術。これまでに登場した分身の術に比して特段目新しいところはない。影丸の‘木の葉がくれ’を知っていたことが却ってあだとなり、風上に移動したのが本物と見極められ仕留められてしまう。

(憑依術) - 夢之丞

 同じく御神楽山を守る夢之丞の術。これと見定めた者(ここでは源五郎)に憑りつき、味方を夢之丞の姿となって戦いを挑んでくるものと見誤らせてこれと戦わせてしまう。どうやって夢之丞と見誤る味方を特定するのかは、それらしい手筈はあるようだがよく分らない。ややこしい術ですね。

 影丸はこの術をかけられる源五郎を縛って防ぐ。そしてこの術をかけている時の疲れがひどいことを知って、その最中に斬りこんで夢之丞を倒す。

 でもシリーズの掉尾を飾る術なんだから、ちょっとかっこいいネーミングがあってもいいにね。― 忍法‘憑き枕’‘夢刃-やいば-’なんてどうだ?